貯蔵庫

日記、ぶつける当てのないもやもやを置いておく場所

飛行機

北海道に旅行に行っていた。一泊二日、職場の同期と3人で。

私なんかと泊りがけで長い時間を共にしても良い、という判断をしてくれた2人は大いなる感謝をしている。はじめて、妻以外の人間と旅行に行った。たくさん同行者の写真を撮った。私は本当に友達を作るのが上手じゃないので、2人の事を大切にしたいと思っている。2人にとって私もそうだといいな、と思う。思ってしまうのは仕方ない事なのだけれど、これはどう考えても欲張りすぎだ。

とにかく飛行機が怖かった。10年前に修学旅行で乗った飛行機が最後だったので、記憶があまりなかったのだが、乗って分かった。怖い。べらぼうにすごい速度で走って、風を受けた両翼を用いて離陸する瞬間、そんな馬鹿な話があるかと思う。どういう理屈で飛んでいるのか知らないし、説明されても分からないが、パワープレイが過ぎると思ってしまう。地上から何千メートルも高い位置に自分がいる事実、怖すぎる。

案の定私は滝のような手汗をかき、そのすべてをズボンで拭った。隣に座る高所恐怖症だと言っていた同行者はケロっとしている。わたしも格好をつけて窓の外を覗いたりしてみる。縮み上がる。機体がふんわり揺れる。私の腹の底で誰かがここは危険だと叫ぶ。電車だってバスだって揺れるだろ、同じじゃないかと何度も唱えて目をつむる。そのうち同行者二人は私の隣で穏やかな寝息をたてはじめた。リラックスしやがって、私もそっちに連れて行ってくれ、と思った。

同じような汗のかき方をする時が、自分が運転する車で高速道路で長い坂道を下っているときだ。自分の意思とは反して、グングン速度が上がっていくことに恐怖を覚える。アクセルを緩めても、速度は落ちずかえって上がっていく。私が制御していると思っていたこの車、既に意思とは関係なく動き続けるじゃん。私がほんのちょっとでもハンドル操作を誤ったら、と考えると一旦止まって深呼吸させてほしくなる。自分の制御の外にあるという事実がそうさせるのだろうか。1時間半のフライトで、こんなに憔悴しきるものか。私には海外旅行など夢のまた夢なのだと思った。

札幌では雪まつりを見た。時計台と札幌タワーに上った。サッポロクラシックを浴びるように飲み、ジンギスカンと海鮮丼を食べ、クラーク像を見に行った。札幌初心者コースと言う感じだ。冗長なので割愛する。飛行機以外の事を全く書く気が起きないのはなんなのだろう、私自身、苦しみ悩んでいる人の文章に惹かれる傾向があるからだろうか。

首都圏が雪に見舞われ、飛行機が飛ぶか否かというアクシデントはあったものの、振り返った時に盛り上がりそうなのでよしとする。ただただ楽しく、幸せでとても穏やかな時間だった。

帰りは悪天候の影響で信じられないほど機体が揺れた。私は手汗でぐっしゃり濡れた手で肘掛を必死に抑える。逃げ場が、逃げ場がどこにもない。脇からも滾々と汗を流し、絶体絶命のカイジと同じ顔をして、ただ体を揺らされた。隣の同行者は「ジェットコースターの上がってる時みたいだ」と言う。まるでこのあと急降下が待っているような発言じゃないか。控えろよ。おまけに日没後のフライトはどんな事情か存じ上げないが、機内の明かりが落ちるタイミングがある。窓の外からかすかに聞こえる旅客機が出す轟音を聞きながらああ、落ちていくときってこうなのかなと思った。

旅行が好きなので、克服したい。何度も乗って慣れていくしかないのだろうか。