貯蔵庫

日記、ぶつける当てのないもやもやを置いておく場所

日記祭

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AM10:00 意識が戻る、体が重くて仕方がない。もう何をするのもおっくうである。外に出るなんて正気の沙汰とは思えない。妻が実家に顔を出すというので、洗濯物を干ししながら見送った。今日は日記祭の日。自分の文章が乗った本を手に入れに行くことは、妻に内緒である。

一張羅のコートを着て、身体を引きずり東京方面の電車に乗る。ここで初めて会場の場所と出店ブースを確認する。無計画が過ぎる。無事に、気になる本を1冊見つけた。この時初めて会場がどうやら外らしいという事を知る。嫌な予感がしてきた、洒落すぎてるぞ。俺浮いちまう。

下北沢に降り立った瞬間から洒落た空気に気圧される。ぶっといズボンを履いたウルフヘアのクラッチバックを持った男、カレーの香り、高架下の壁に等間隔で持たれる若者、路上飲酒お断りの看板と落書き。情報量が多い。端的に表すならば、居心地がわりい。私の生活にはきっと、駅前に1つ、何でも揃うでっけ~複合施設があればそれだけでいいんだと思った。

あたたかな陽気の中をエアポッズが喋る言葉通りにずんずん歩いていく。歩く無計画である私が、ひとりで、当たり前のようにどこへでもいけることに喜びを感じる。見えてきた会場がお洒落すぎてテーマパークの一角みたいになってる。マスクの下で軽く口をすぼめ、得意の「偶然ふらっと立ち寄った人顔」をした私は、会場に足を踏み入れる。

意味が分からない。女の子が出展ブースの前の丸太みたいなテーブルの上で異国のカレーを食っている。なんだかこぢんまりとした屋外のフードコートのようだ。フードコートの端っこで日記を売ってる店が並んでいる。私はご飯を食べる人の合間を縫って進む。ああこういう感じ、全然、自分、慣れてますよ。なじみ深いっすよ。というオーラを纏った私は口をすぼめたまま、古民家のようなはてなのブースへ突撃する。

ブースの中であたたかく声をかけて下さった担当者さんに私はほっとした。なんでも日記本の内容を選定した担当者の方らしい。私は自分のブログを読んだことがある人に会うのが初めてで、嬉しくなってしまった。私は書いた内容をぺらぺらと喋りまくってしまうも、ピンと来てない模様。はっずー。毛穴から汗が吹き出し、目は泳ぎあぱあぱと口から空気が漏れる。フェードインしてきた他の来場者さんを盾にし私はブースを逃げるように去った。

電車内で目を付けたお店にはハンサムが座っている。彼は女性のお客さんと笑顔で話をしている。四往復ほど会場を横断してみたが、なお、盛り上がっている。割って入る力は、私にはなかった。

帰ろうと思った。私にはまだ早かったのかもしれない。もう来年28だけど。早かったのかもしれない。本当に、いつになったらうまく人と話せるようになるのだろう。

帰りにタコス屋さんで1杯飲んで帰った。よくわからないけれどランチメニューの1番上のやつを頼んだ。お盆の上に小さいトングが乗っている。食い方が分からなさすぎる。隣の外国の方の食べ方をチラ見しまくった。倖田來未似の店長っぽいお姉さんが、店が忙しく、挨拶が疎かになっていた店員さんを一喝する。くーちゃんのせいなのか、アルコールのせいなのか、下北の瘴気にやられたのか、もう、味があまりわからなかった。

家にまっすぐ帰り、とりそぼろをつくって食べ、そのあと泥のように眠った。私にとってこの度の祭は反省の多いものとなった。おしゃれで、かっこよくて、余裕のある大人が集う素敵な催しであることを申し添えておきたい。私もこの重くのしかかる巨大な自意識を打ち負かし、ぐるぐるに縄で縛って相模湾に沈めたら、いつかそっち側に行くからな。ハンサム、また絶対出店しろよな。遠くからお前のことを見つめていた、俺との約束だぜ。