貯蔵庫

日記、ぶつける当てのないもやもやを置いておく場所

ひとり石川旅行 後編

 

mikkaa.hatenablog.com

 

兼六園を出て、洒落た大通りを歩く。広くてきらびやかで気持ちがいい。どんつきまで歩ききり、ごちゃっとした交差点に出る。あたりは薄暗くなってきた。冷える。

そろそろぼんやり歩きつつ金沢駅前に戻ろうか、などと思いながら信号が青に変わるのを待った。何気なく振り返ると乳白色に輝く看板が目につく「金沢おでん」の文字。私は吸い込まれるように看板の下へ。

 

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えらく年季と気合の入ったたたずまいに思わず写真を撮る。旅行に来たからには、スタイリッシュで観光客向けのお店ではなくこういう店に入りたいものだよな、と思う。意を決して引き戸を引く。

夕飯時には早い平日17時前にもかかわず、空いている席はカウンターの2席のみ。客全員が私の方を見ていた。私はこの時点で、なにか、なにかとんでもない場所に来てしまったことを察知した。

店内も非常に趣がある仕上がりとなっていて、おまけに隣の人と肩が当たりそうな間隔で座っていたので、カメラが取り出せなかった。順々におでんをオーダーをしていく。わたしは目が悪く壁に貼ってあるメニューが全く見えなかったので、客たちが頼んでいるメニューを覚えて、勢いで注文をした。なかでも、皆が一様に口々にする「カニメン」という謎の単語があった。意味も字面も全く分からなかったが、恐らくなにかいいものなのだろう。発音があっているのか、すら危ういが「カニメン」を注文。特に突っかかることなくオーダーは通った。

言うまでもなく、出てきたおでんは絶品であった。特に車麩が最高。そうだよな、お麩こそおでんにあってしかるべき具材である。大根が熱すぎて口の中が爛れるなどしていると、例のカニメンが現れた。その正体は、直径10センチほどの蟹の甲羅に、脚の肉で蓋がしてあるものだった。脚の蓋をどかすと、その下には味噌ときゅうきゅうに詰まった卵が現れる。これがもう、信じられないほど美味しい。シャキシャキのたまご、蟹の濃厚な風味、おでんのだし、ほどけていくような脚の肉。いくらなんでも美味しすぎる。おでんの最高到達地点だろう、こんなもの。私は思わずうなりながら腕組みをしてしまった。

胃の許容量が大きくないので、6品とビール2杯で店を出た。既に店の前には行列ができていた。私はとんでもない大当たりのお店を引いてしまったようだ。ホクホクである。

 

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武家屋敷の通りをぽやっと歩きながらホテルへ。ライトアップがお洒落でとてもいい雰囲気だった。金沢城兼六園も暗くなってからだと雰囲気が違いそうだなあ、などと思った。宿泊したのはマンテンホテル金沢というホテル。ビジネスホテルなのだが、大浴場・サウナつき。内装もきれいで好感度しかない素晴らしいホテルだった。バッチリ整って浴場を後にし、畳の休憩室でNHKのニュースを横目に流し込むコーヒー牛乳に勝るしあわせ、数えるほどしかない。

 

翌日は、のとじま水族館をめざしてカーシェアを利用して北上。なかなか遠かった。ハイウェイを1時間半ほど走り続ける。なぜか料金はかからなかった。良心的だぜ、石川県。

この日はあいにくの空模様だったので、能登島の美しさが堪能できなかったのが残念。水族館の裏側には海が広がっているので、晴れた日にはさぞ気持ちのいい景色だっただろうなと思う。

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巨大水槽の上部が開いており、覗きこめるようになっている。水面スレスレまでシュモクザメジンベイザメがパトロールに来てくれるので、非常に近くに生き物を感じられる。とんでもない質量だなと、改めて実感できるいい水槽であった。そのぶん、魚の香りはバツグンなので、気を付けてほしい。

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プロジェクションマッピングなどを用いて、華やかになっている箇所はあるものの、全体的にノスタルジックな空気感のゆったりした水族館だった。水族館建屋フェチのわたしとしては、来て大正解である。室内のイルカショーコーナーとか見てくれよ。この溢れ出るボス戦ステージ感、巨大魚型モンスターとの戦闘来るだろ絶対。きっと、骨組みから垂れた鎖を操作して敵を誘導するギミックがあるだろ。

 

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帰りに休憩で立ち寄った知らない道の駅で老夫婦に交じってジェラートを食べた。良い。ピスタチオと能登の塩味。素晴らしく美味しかった。そうなんだよ、こういうのが良いんだよ。旅行だぜ、と思う。

 

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無事に金沢駅に舞い戻った私は最後の金沢おでんを食い、お土産をしこたま買って帰りの新幹線に飛び乗ったのだった。

ご飯がおいしいし、ほぼ無計画で家を飛び出したにもかかわらずコンパクトに観光名所が詰まっていて、非常に観光しやすかった。歩くだけでも古い家屋が点在しており、旅行気分に浸ることができる。非日常に、遠くに、来たな!という実感すごく大切。

平日に行ったからかとは思うが、どこも人がごった返しているという印象もなく、本当にゆっくりと過ごすことができた。また行きたい都市ランキング堂々の1位である。