片思い中の女の子とクラスが離れ、友達が一人もできず机に伏していた高校2年生。親のサイフから金を引き抜いて小遣いの足しにしていた高校2年生。自転車で帰宅中、訳もなく涙が流れた高校2年生。その色々と荒んでいた年の冬に出会った本が「太陽の塔」だった。
当時、いけすかねえ丸メガネ ボブカットの女が読んでる書物だと勝手に決めつけていた森見登美彦作品、出会いはあまり覚えていないんだけどブックオフで買って読んだんですよ。
読み始めてすぐ、どことなくかっちりとした文体と死ぬほど馬鹿馬鹿しい内容のギャップに魅せられた。小説というか「文章」の面白さの片鱗に触れることができたような気がした。文章は自由なんだと思わされたというか。
意中の女の子の移動教室の時間を秒刻みで記憶し、バッタリ曲がり角で合うようにタイミングを計ってトイレに立つという気色の悪い趣味を持っていた当時の私。改めて文字に起こしてみるとほんとどうかしてたな。主人公と重なる部分が多すぎて読みながら小刻みに震えたのを強く覚えている。
特に好きな場面は主人公が自慰に対する気持ちを語る場面だ。フィクションとはいえ自慰というおおっぴらにすべきでない極めてプライベートな部分をこんなにポップに書けるものなのかと感心した。感心するとともに「自慰は恥ずべきことでない、世界の秩序を保つために必要不可欠な行為なんだ」と思うと賢者時でも少し元気が出た。
「青春の一冊」とはいえこれらは3,4年前の出来事であり、傷口はあまり治っていない。掘り返してネタにして文章を作るのはいささか早すぎたと思う。
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