貯蔵庫

日記、ぶつける当てのないもやもやを置いておく場所

親知らず-汗と絶叫の歯科検診編-

もう書きたくないよこっちだって。一体何部作になるのだ、我が左下の白い悪魔シリーズは。日記をさぼってる間にお気に入りの靴を買ったり、ファイアーエムブレムを買ったり、その反動で筋トレと読書を一切やらなくなったりした。休みは終わりだ、気を引き締めねば。

先日はいよいよ歯科医に歯を診てもらう決戦の日であった。ここまで長い道のりだった。ピークは過ぎ去ったものの、まだかみ合わせは悪い。喉、首、頭、顎、耳、すべてを巻き込む親知らずの猛攻に私は長きにわたり苦しめられてきたわけだ。いよいよ終わる。もう手が付けられない恐ろしい化け物になってしまった自分の子を、殺し屋に殺めてもらうイメージをしていただければよろしいかと。入念に歯ブラシを行い、髭を剃り、おろしたてのお気に入りの靴を履いて、家を出る。

診察券と保険証を受付に提示し、パステルカラーの合皮のソファに浅く腰掛ける。前回バックレへの言及は無し。ほっと一安心。この白い待合室には本を読みながら独り言を垂れ流すお婆さんと私のみ。歯科医院特有の瘴気に充てられたのか?これから起こる壮絶な戦闘を予兆しているようで思わず唾をのむ。震える手を抑え、ツイッターを眺めていると眼鏡の似合う背の高い綺麗な歯科衛生士が私の名前を呼ぶ。処刑人が綺麗な方でよかった。一思いにやってくれ。

診察室に入ると、かけてお待ちくださいと声をかけられる。若干の傾斜はついているものの、ほぼ横たわるような形となる。視線の先にはおろしたての靴。ありがとう、君はそこで見ていてくれ、私の勇姿を。ふっと靴から視線を上げると、患者を落ち着かせるためか、モニターに北の大地の針葉樹林を上から映した、綺麗な映像が流れている。ああ、私は美しい惑星(ほし)に生まれて幸せだったな。ありがとう、ありがとう…。

親知らずの具合を確認するために、歯科医師が私の頭上で口を開けてくださいと言う。さっと確認を終え、現在私の口内には虫歯の歯が無いことと、歯茎に埋まった生えかけの親知らずはここで対応ができないことを伝えられる。この暴れん坊め。口腔外科へ紹介状を書いてもらう事となった。嫌すぎる。外科じゃん。オペじゃん。切るじゃん。手術台の上じゃん。端的にいうと仮面ライダーの改造手術みたいな絵面でしょ。怖すぎる。はーーーーー。しかし、もうブログに熱い思いを綴ってしまったし、逃げるのはやめようと思った。行きます、口腔外科。私、いきます。

歯の具合の写真等を正面のモニターで移しながら説明をしていただく。ぱっと、私のカルテが一瞬目に入る。「前回無キャン」の文字。これ無断キャンセルだ絶対。しっかりと記録が残ってしまった。治療を逃げ出した臆病者の烙印を押されている。バックヤードでは「ああ~、あの無キャンの人ね(笑)」ってなもんだろう。悔しい。無キャンの汚名を返上したい。定期健診に来てやる。3か月ごとに電話予約の後、真面目に来てやる。きてやるからな!!!よろしくお願いします!!!!

もちろんこんなみっともない感情、表には一切出さない。虫歯もないので、今回は歯石を削り取っていただき、終了ということ。

普通に痛いのね。歯石とるのって。痛かったら手を挙げてくださいと優しい言葉を頂戴する。しかし、私はこういう時に手を挙げたことが無い。そういう性格だ。大人を装ってしまう。隣の診察室からこの世の終わりみたいな子供の泣き声が断続的に聞こえる。分かる。分かるぞ。俺も今泣き出して両足をバタバタさせたい。ずっと痛みに耐え顔面を歪めながら「そこ歯茎歯茎歯茎歯茎~~!!ほんとに歯茎~~~!!」と思いつづけた。15分くらい続いた。特に下の前歯が痛すぎる。黒のロンTで来てよかった。私の背面は汗でぐっしょりである。歯科衛生士さんのニトリルグローブ越しの指と、器具が左下から右上へ、ぐーーっと移動していく。一通り終わえると、汚れが残っていたのか、下の前歯へ。そこが一番痛いのだけれど~~~!!!下の歯、念入りに磨く。フロスもする。だからもう、痛いのはやめてくれ。

youtubeでたまに見ちゃう歯石除去の動画と同じことが今、私の口の中で行われていたのだなと思うと少しスッとした気持ちになった。歯科衛生士め、歯石除去するの絶対好きだろ。あんなスッキリするの私も手掛けたいよ。

歯の異常なキュッキュぶりに違和感を覚え、朦朧とする意識の中金を払い、薬をもらい出口の自動ドアを出る。出て速攻新品の磨きやすそうなちょっと高いハブラシを買った。頑張ったので、家に帰り風呂に入りからあげを揚げた。最高の出来になった。氷結の無糖すげーうまい。からあげ用のお酒といっても過言ではない。

にこにこ顔でからあげを食べていると、歯医者から電話がかかってきた。終わったと思った。きっと治療後にアルコールはよくない。怒られる。歯石除去に狂った歯科衛生士がからあげを噛んだ際の汚れをこそぎに来るのだと思った。保険証と診察券を受け取り忘れたらしい。あの空間に行くのも少し抵抗があるが、理由ができた。早めに仕事を切り上げて、回収しに行こうと思う。

今回、親知らずのことは何も解決しておらず、ただ歯が綺麗になっただけなのである。2000字も書いてしまった。行くのが億劫すぎるのだが、今週か来週には口腔外科編を執筆することになるだろう。ほんっっっとに嫌。嫌。